樵になる

 時々、島根の自分の山に行って杉を伐り倒していることは漁山に書いた。島根の山に行くたびに5本、10本と杉を伐り倒してきたが、直径が30cmを超えると鋸1本で手で伐り倒すのであるから容易なことではない。もう60歳に近くなったのでチンタラ伐っている暇はない。自分の山を落葉広葉樹の森に戻そうと考えているのであるから、疎らに立っている落葉広葉樹の新芽が出る前に邪魔な杉をできるだけ伐っておきたい。しかし、これまで細い杉から伐ってきたので太いのばかりが残っている。

 4月14日(日)、朝6:20に家を出て、10時過ぎに山に着く。長靴を履いて、カメラの入ったザックを背負い、鋸、鉈、鎌、斧、玄翁(大型ハンマー)を持って山に入る。山に入ると言っても小さな猫の額ほどの面積しかないので20〜30m登るだけである。この日は今から芽吹く落葉広葉樹の枝を邪魔している杉を伐る。前回来た時に大概の杉を枯らすために幹の周囲に浅く切り込みを入れておいたが、全く枯れるような気配もない。直径は約40cm。これを鋸で伐っていく。比較的細い杉の場合、木がどちらに傾いているかを確認して、ある程度、自然の成り行きに任せて倒していたが、直径が40cm程度になると安定してほぼ垂直に立っているので倒す方向をコントロールしなければならない。

 今回は、鋸である程度伐ったら途中から斧を楔として打ち込んで、鋸がスムーズに動かせるようにしながら、かつ倒す方向をコントロールすることにした。

 切り株が変な状態になっていますが、年輪を数えると約50年物。親が九州に出てくる時に植林した杉でしょう。当時は戦後10数年で将来木材は売れると思って日本中が杉を植林したような時代だったのでしょう。

 下には墓に行く道があるし、何故か既にサクランボの木や柿の木の苗を植えているのでそれらを避けて倒さねばなりませんが、なかなか上手くいきません。

 古い墓に行く道を塞いでしまいました。チェーンソーを持っていれば、切って処分するところですが、無いので自然に朽ち果てるのを待つしかありません。左上のロープのようなものは蔦です。

 だいぶ山の中がスカスカになってきましたが、まだまだ杉がたくさん残っています。しかし、手にマメもでき、今日は50年物の杉を約3時間で5本切っておしまい。それにしてもブユがぶんぶん飛んで耳たぶなどを刺されました。

 杉の根元にイカリソウが咲いていました。珍しい花かと期待したのですが、そうでもないようでした。生薬として精力剤などにも使われるとか。

 津和野でのわさび栽培研修で頂いたワサビの苗を昨年11月に少し谷めいた場所に植えたのですが、育っていました。元々は野イチゴ?の葉が密生していた場所なのでワサビが育つのは無理かと思っていたのですが、野イチゴは蹴散らされて周囲から無くなっていました。凄い生命力です。

 40cm級の杉が倒れた時の衝撃は細いのとは少し違います。樵(きこり)になったような気分です。

(2013年4月16日 記)

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